★ [SilverSackの自画自賛] SilverSack World Tour
別の記事でも書きましたが、15年ほど前にドイツにいました。その時は、まだ子供がいなかったので、毎週末車を飛ばして、ドイツ中を回っていました。その中で非常にダイナミックな建造物として印象に残っているのが、このヴィルヘルムスヘーエ公園です。ここではそれを紹介します。
ヴィルヘルムスヘーエ公園は、ドイツ中部のヘッセン州カッセル市にある公園です。カッセル市は、メルヘン街道のほぼ中程にある都市で、人口約20万人ですから結構な大都市です。ただ、メルヘンチックな所は非常に少ない町なので、メルヘン街道に観光に行ったといってもここは入っていないケースも多いかもしれません。ここで紹介するヴィルヘルムスヘーエ公園もメルヘンチックではなく、グリム童話とのゆかりもなく、といったそんな場所です。ちなみにヴィルヘルムスヘーエというと「ウィリアムさんの丘」といったような意味です。
ここで紹介するのは、ヴィルヘルムスヘーエ公園全体ではなく、その公園にある噴水です。一応「噴水」と呼ばれているので、噴水と呼びますが、この噴水は一般的な噴水とは全く異なるものです。丘の上にヘラクレス像を戴いたお城のような建物があって、それが噴水になっている。その噴水は、週に二回(夏の水曜と日曜の午後)しか水を吹き出さず、その噴き出した水は、丘の上の建物から連なって作られたいろいろな建造物を伝って麓の池に流れていく、といったそんなようなものです。こうあっさりと書いてしまうと「それのどこがいいの?」ということになると思いますが。
ヴィルヘルムスヘーエ噴水(めんどくさいのでそう呼んでしまいますが。)の魅力は、一言でいうと見るだけの噴水ではないということです。水は頂上のヘラクレス像のところから麓の池まで約一時間かけて流れます。距離にして大体4km位でしょうか。その4kmの水の通り道は、水は流れる前は干上がった池の様であり、無味乾燥な建造物であり、そういう印象なのですが、それが水が流れ出すことによって、何か生き物が生まれるような印象になり、そして、最後には川になり、滝になってしまうのです。
水が通るときにいろいろとサプライズがあるというのも魅力です。水が通るとラッパが鳴る仕掛けがあったり、途中の滝は滝の後ろを通れたり、山道を降りていくと突然廃墟の滝が現れたり、結構飽きさせません。それがなくても景観の変化を見てるだけでもかなり面白いです。上の3枚の写真は、同じ場所の水の流れる前と後の写真ですが、こういう景観の変化を見せてくれる噴水はまずないと思います。見るだけでも十分楽しいともいえます。
で、みなさん、どうやって楽しんでいるか、なんですが、とにかく水の流れを追って、ひたすら山を駆け下りていきます。水が出たのをしばらく楽しんで、山を駆け下りて水の先回りをして、水を待ち受けて、水が来たらまた駆け下りて、サプライズがあるところで水を待って、それを麓の池まで繰り返すことになります。水の流れは歩く速度よりちょっと早いくらいなので、別にふつうに歩いてもいいわけですが、やっぱりみなさん、下で水を待ってるんですね。で、水に追いつかれると走ってまた水の先回りをするんですね。子供たちなどは、おとなの倍くらい駆け下りたり待ったりしながら、思いっきり楽しんでいたと思います。きっとここには本能的に楽しい何かがあるんではないかと思います。私もヘラクレス城のすぐ下の石の階段では、水の通り道に入って、水が来るのをまったり(当然足はぬれますが)、石の回廊を何周か走ったり(滝の裏を見るわけです)、なんてことをしながら、ひたすら山を駆け下りていました。(途中ビデオのテープがなくなって、麓まで駆け下りて、テープを取ってまた戻ってくる -結局二往復したわけですが- というおまけ付き。自業自得ですが。)
で、これは極めて人工的な建造物なんですが、その噴水が終わった後は、なんか自然と戯れたような、山の渓流で遊んだような、そんなような感覚でいました。なんか不思議な感覚でした。参加型の水のエンタテインメントという形容(クサイ表現だと思いますが。)が正しいのではないかと思います。ということで、「見るだけの噴水ではない」というわけです。ドイツ旅行とかメルヘン街道旅行という文脈では何の必然性もないとはいえるんですが、この近くに行くんだったら、プランに入れる価値はあると思います。これ、かなりイケてますんで。
(2008年 8月24日 記)