☆ ハイブラウ

3曲目のこの「Endeavor」は、前作「Voice」の3曲目「Now or Never」と同系統のコミカルな味わいを持った曲です。とはいっても、メロディは、ワケワカ系のAメロ、コミカル系のBメロ、エレガントなCメロと、しっかり展開を考えたもので、メロディ自身の出来がいいことと相まって、とにかく出来は「Now or Never」とは段違いであります。しかし、ホント、格段の進歩ですね。いったい、何があったんだろ。ビックリです。「Now or Never」は、コミカルタッチの曲で、ほぼコミカルオンリーですが、、やっぱりコミカルオンリーでは感動できないんですね。どこかにマジな部分がないといけないんです。で、この曲は、Aメロ、Bメロともコミカル系なんですが、エレガントなCメロがそこら辺を全部受け止めて結論ぽくなっていてホントにいいメロディです。コミカルなメロディとマジなメロディを組み合わせて曲を作るなんてことは、今まではやってなかったんじゃないかなぁ。すごい重層的な、多層的な印象のメロディです。メロディ自体も前回「Voice」の時のように叙情的に流れるところがなくて、骨太です。

2分あたりからアドリブに入りますが、ソロは、圧倒的にジャズテイストで、前作「Voice」でいえば「Temptation」のソロに近いかな。でも、「Temptation」が、アンニュイ系であるのに対し、こちらは、かなり余裕こいて斜に構えた感じで、なんちゅうか、こちらの方が更にジャズテイストであります。(ジャズの曲にジャズテイストというのも面白い評価ですが。)曲調を裏切ることなく、メロディに完全に則ったアドリブで全く危なげがありません。とはいえ、実は、ちょっと食い足りないというのが、正直な感想です。前回はメロディの出来がイマイチだったからというのも原因になっているのでしょうが、ソロがメロディを裏切って、そのギャップが更にソロの印象を増すといったところがあったのですが、今回はメロディとソロのギャップがないので、ソロがちょっとメロディに埋もれてしまった印象です。今度は、アドリブの力をつけて、このハイブラウなメロディに負けないソロを弾けるようになりましょう。

☆ ベースソロとドラムソロ

ひろみちゃんのソロは、4分20秒あたりまで続くのですが、後は蛇足です。ひろみちゃんのソロの後にはアンソニーのベースのアドリブが入り、その後、テーマの戻った後、5分30秒あたりから曲の終わりまでの約2分は、ひろみちゃんとサイモンの掛け合いです。ベースソロもドラムソロも退屈です。で、実は、このアルバムの感想を書く間、結構な頻度でこのコメントをすることになります。ホント、多いんですよ、ベースソロとドラムソロ。何で、こんなことになっちゃったんだろ。リズムセクションは、メロディの陰で、メロディ顔負けのフレーズを人知れずぶち込むのが粋だと思うんだけどなぁ。

(2013年 3月31日　記)