☆ もう一年半経ったのか

このサイトではかなり書きたいことを書きましたが、前作「Voice」はなんだかんだいってこの一年の愛聴盤でした。この「Move」は、9月5日に発売になったわけですが「Voice」は2011年3月の発売だったので、もう一年半も経つんですね。まだ、半年しか経っていないような気になっていました。このCDを買うのと同時に「Live in Marciac」というDVDも買ったのですが、その演奏の日付が2011年7月31日になっているのを見て、「あれ!?Voiceが出る前じゃん」なんて。かなりの回数聞きましたが、殆ど飽きなかったんです。

さて、今回の「Move」ですが、まず、ジャケットがよくなりました。前回は、なんかホラー映画で被害に遭う女性主人公のような顔になっていましたが、今回は髪を風になびかせ、斜め見でこちらを見る構図で、かなりの美人に見えます。彼女の顔のアップじゃないジャケットにならないのか、というのはあるんですが、恐らく営業的にそういうポリシーにしてるんでしょうねぇ。若いかわいい女性がビックリするような演奏をするという感じで、ジャズ界のアイドル的な感じで売ろうとしているのではないかと。まあ、今回のジャケットは良しとしますが。

☆ このサイトを見ていたのか

このサイトで「Voice」の感想を書きたい放題書きました。これはジャズじゃない、とか、主旋律が少女趣味で陳腐だ、とか。今回の「Move」は、まさか、このサイトの文章を読んでたわけじゃないよなぁと思うくらい、そこら辺がてこ入れされています。タイトル曲「Move」は、前回のタイトル曲「Voice」と同様プログレテイストですが、他の曲はかなりアダルトなテイストを入れたメロディや印象の異なるAメロとBメロを組み合わせるとか、かなりジャズ路線に振ったメロディになっています。「Reality」などは上原ひろみとしてはめずらしく、アップテンポの4ビートスイングなんてのもやってます。魅力的で耳に残るメロディも結構あります。

ただ、ソロパートの魅力は、逆に落ちてしまったように思います。前回は、大体のソロパートが静かに始まって、最後ははじけて終わるという、フュージョン全盛期の典型的なソロ構成が多かったんですが、今回はメロディが大人っぽくなった関係か、不協和音を多用した不条理系のソロが多くなりました。で、なんか乗り切れないなと。前回は、ピアノ表現のカタログみたいにいろいろなフレーズがこれでもかという具合に詰め込まれていて、品がない部分もあるとはいえ弾きたがりの彼女らしくて良かったんですが、今回はそんな弾ける感じがありません。「Live in Marciac」は、かなり不条理系のソロが多くて、私はがっかりしたんですが、世界ではこちらの方が受けがいいんだろうか。うーん。

☆ アンサンブル

三人のアンサンブルですが、いい意味でも悪い意味でも手慣れた感じです。お互い、どういう時にどういうフレーズを弾くのかが分かるようになってきたんでしょうね、相手の演奏に一番適したフレーズが選ばれていて安定感、安心感のある演奏になっています。一方で、工夫の跡のようなものが見られなくなりました。前回は特にサイモンフィリップスが出しゃばっているところに魅力的なところがあったりしたんですが、今回はひたすら親和性の高いアンサンブルになりました。

あと、ベースが前面に出たり、ドラムが曲中ソロを叩いたりという場面が増えたように思います。ベテラン二人に気を遣ってそうしたのかもしれませんが、ベースもドラムも主旋律の後ろで好き勝手やってるところにかっこよさがあるのであって、曲の前面に出てきていいことは何もないので、こういう気の遣い方はやめて欲しかったなと思います。二人ともひろみのフレーズの後ろで、それに負けないフレーズをぶち込んで来いや。

☆ ウェブ上の関連情報

Amazonで「Move」を買う	Amazonでの「Move」のページです。
上原ひろみオフィシャルサイト	上原ひろみさんのオフィシャルサイトです。Moveのムービークリップがついてます。
Simon Phillips Official Site	サイモン・フィリップスのオフィシャルサイトです。あんまり更新されていないので、この作品に関する情報はないようですが。

(2012年11月17日　記)