Earth, Wind & FireのSee the Lightを訳した後、「ああ、70年代の黒人の歌には、世を憂う歌が多いんだな。」と思って、なんとなくもう少しそういう歌を聴きたいなと思うようになりました。このWhat's Goin' Onは、Chaka Khanがモントルージャズフェスティバルで歌ったやつを持っていたし、ハッチボッチステーションでグッチ裕三がこれをもとに「山口さんちのツトム君」をやったのも持っていて、知っていたし、なんとなく好きな曲でした。ただ、歌詞はよくわかっていませんでしたが。で、先日「Song to Soul」で取り上げているのを見て、結構な社会派の歌詞だということが分かってちょっと驚きました。Chaka Khanは、かなり元気いっぱいに歌っていたのですが、そういう歌じゃないわな。よく聞くとそっちは歌詞も結構オリジナルからは変えていたようですが。

Marvin Gayeもそれまではラブソングばかり歌っていたようですが、弟がベトナム戦争から帰還してこういう歌を歌おうと思ったようです。年を取ったのか、私は、最近、こういう歌を聞くと泣いてしまいます。この訳詩をする前に、歌詞があっているか曲を聴いて確認したのですが、その時も泣いてしまいました。日本にはなぜこういう世を憂う歌がないのかなぁ。個人的な寂しさを歌われても全然泣けないと思うんだけどなぁ。

心に残るフレーズは、「You know we've got to find a way to bring some lovin' here today」ですね。「Got to Find a way」は穏やかに、「to bring some lovin' here today」は、力を入れて歌っています。「here today」は、「明日じゃダメなんだ、今すぐじゃなきゃダメなんだ、どこでもいいわけじゃないんだ、ここでなきゃダメなんだ」という気持ち、「some lovin'」には「もし作り出せるなら、ほんの少しでもいいんだ」という気持ちが込められていて、ジーンときます。更に、日本語は訳出できていないところもあります。「got to」じゃなくて「have got to」と現在完了形になっているんですよ。今まではそうじゃなかったんだけど、今そうなったんだ、というニュアンスを込めているのでしょうが、なんか切迫感を感じます。あと、「ちょっとでも愛する気持ちが生まれるような」と訳しましたが、英語は「我々がsome lovin'をbring」するとなっていて、自らの行動で問題を解決するといったニュアンスも入っているんですね。前に「泣けた」って書きましたけど、悲惨さを描いても泣けないんですね。悲惨な状況に立ち向かおうとする意志が泣かせるんです。

実は、この詩を訳したのは、ちょっと前なのですが、訳してからここに載せるまで、フランスでのテロとか、イスラム国による日本人の殺害なんてことがありました。この曲が生まれた時とは異なる状況ですが、「We don't need to escalate　You see, war is not the answer　For only love can conquer hate」のメッセージは重いなと感じます。乗り越えるためにはこう思い続けないといけないんでしょうね。

(2015年 2月 7日　記)