経済財政白書 (令和2年度) - [SILVER SACKの自画自賛]

毎年7月くらいに発行されていた経済財政白書ですが、2020年度は9月になっても発行されず、「どうしたんだろ。」と思ってました。2月に楽天KOBOに出たのをすかさずGETしました。なんですが、内閣府のウェブサイトには11月に出てたんですね。迂闊でした。電子書籍よりもPDFの方が読みやすいし。ちゃんとウェブサイトをチェックしよ。

有料の書籍ではなくネタバレなど気にする必要がないので、内容についてはあらかたまとめてしまいます。

第1章　新型コロナウィルス感染症の影響と日本経済

第1節　感染症流行下の我が国経済の動向

1. 感染症の拡大と我が国の経済動向

2020年第1四半期と第2四半期は新型コロナウイルスの影響でマイナス成長になった。
世界経済も新型コロナウイルスで大きな影響を受けた。IMFの試算による成長率は-4.9%であり、リーマンショックの-0.1%に比べて桁違いに大きい。
感染症という観点では2003年のSARSは景況に殆ど影響はなく、その点でもコロナの影響は大きい。
経済を押し下げた要因で見ると、リーマンショックは「信用収縮・需要ショック」、東日本大震災は、「供給ショック」だったが、新型コロナウイルスの影響は「需要ショック」である。
GDPギャップ(需要と供給力の差)は第1四半期で-10.9%(リーマンショック時は-6.9%)と大きい。資本稼働率は第1四半期に大きく低下したが、第2四半期には下げ止まった感がある。失業率は上げ止まっているが、今後上がる可能性があり、注意が必要である。

2. 家計部門の動向

実質総雇用者所得は、第1四半期は大きく増加した。給与は下がったが定額給付金がそれよりも多かったと考えられる。
個人消費は新型コロナウイルスの影響で大きく減少した。下振れ幅は、第1四半期が8兆円、第2四半期が31兆円と計算される。リーマン時は、5.5兆円、東日本大震災時は6.5兆円だったので、減少額は相当に大きい。
品目別の影響については、自動車は一時落ち込んだが6月には回復、家電は6月には対前年プラス、スーパーは大幅増、旅行は緊急事態宣言時-100%が解除後-80%、外食は緊急事態宣言時-40%が解除後-20%。耐久財は、定額給付金で消費を喚起できたが、サービスはそうならなかった。GoToトラベルとGoToイートでこれらの消費を喚起させる。
住宅は引き続き低調。テレワークの影響で好調な地域と不調な地域が出ることも考えられたが、そうなっていない。

3. 企業部門の動向

企業収益は新型コロナウイルスの影響で大幅減となった。製造業は世界経済の影響、非製造業は売上の減少による。
製造業は、輸出の減少で落ち込んだが、第1四半期で在庫調整が終わっており、第2四半期は回復が期待される。
非製造業は、製造業よりも落ち込みが大きい。
今後は、企業の設備投資が抑制されるか(それが景気減速に繋がる)に注意が必要である。

4. 対外経済関係の動向

輸出は、新型コロナウイルスの影響でまず中国向けが減少し、次に欧米向けが減少したが、6月以降は回復の動きが見られる。
輸入は、2月に落ち込んだが3月に急速に回復した。パソコン、マスク、防護服が増加した。
訪日外国人がほぼゼロになり、四半期あたり1.3兆円あったインバウンド需要はなくなった。
新型コロナウイルスの影響でサプライチェーンの見直しを迫られる可能性があるが、これまで対外直接投資は労働生産性とGDPの両方を増加させる効果があり、今後もその重要性は変わらない。

第2節　賃金物価の動向と財政金融政策

1. 賃金の動向

企業業績は悪化し、求人が減り、有効求人倍率は低下した。失業率は上がっておらず、これは企業が余剰人員を雇用し続けているためである。この数は600万人ほどと考えられる。
基本給は下がっていないが、残業が減少して給与収入は低下した。休業者の増加も影響している。
有効求人倍率の低下は今後賃金の減少に繋がる可能性があり、注意が必要である。

2. 物価の動向

企業間の取引価格は、2020年に入り下落している。物価は、石炭、石油の下落に影響されている。サービス価格は、特に広告関係が下がっている。
消費者物価は、生鮮食料とエネルギーを除くと対前年で上昇している。食料、一般材が上がっている。エネルギーを入れると対前年マイナスになるが、これは国際需給の軟調による価格下落が影響している。
消費者物価の先行きを見てみると、GDPギャップが押し下げ要因になるので、消費者物価は下がると思われる。単位賃金の上昇のためには労働生産性の回復・向上が必要で、そのためには早期の需要復元、人件費増の販売価格への転嫁が必要である。

3. 財政金融面の動向

各国の中央銀行は、大規模な金融緩和を実施している。M2(貨幣供給量)は8%程度増加している。
リーマン時と比較すると今回は、株価は落ちも早かったが、回復も早かった。為替は安定的だったといえる。企業の資金繰りは、悪化はしているが、リーマン時ほどではなく、銀行の貸し出し意欲も高い。
政府債務は、前年比で23.2%悪化しているが、主因は、歳出増(12.8%)、実質GDP成長率低下(9.9%)である。歳出はワイズスペンディングに変えていく必要があり、歳入減に対しては、デフレ状況に戻さないこと、成長経路への回帰を急ぐことが重要である。

第3節　感染症の経済への影響と今次景気循環の検証

1. 景気循環の局面判断とその指標

月例経済報告では、2020/2まで景気は緩やかに回復しているとされてきたが、最近発表された景気基準日付では2018年10月が第16循環の景気の山だったとされた。
2018年後半以降の我が国経済は、外需が弱く内需が堅調、製造業の生産が弱く非製造業の生産が堅調という状態だった。これは今までなかったことで、第16循環の景気拡張局面において、経済変動の波及メカニズムに何らかの構造変化が起こっていたと思われる。
景気動向指数は見直す必要があるが、見直しに当たっては、a) より幅広い指標を取り入れること、b) 継続性を確保すること、c) 実質GDPとの連動性の高さを重視すること、が必要である。

2. 今時景気局面での経済の構造変化

今回の外需の減少は緩やかで、生産に対する影響は少なく、利益に対する影響も小さかった。そのため、設備投資の減少も起こらなかった。

第4節　本章のまとめ

(割愛)

第2章　感染症拡大の下で進んだ柔軟な働き方と働き方改革

第1節　感染症拡大の影響を受けた労働・生活環境と働き方の変容

1. 感染症の拡大を受けて急速に進んだ柔軟な働き方

新型コロナウイルスの影響で休業が増え、労働時間は短くなった。
宿泊、飲食、娯楽業では、4月以降所定内労働時間が大幅に減少している。製造業では、4月以降所定外労働時間が減少している。
4-5月の緊急事態宣言の間、企業の5割、従業員の2割が時差出勤を実施した。またこの間は、時差出勤と在宅勤務の関係で、出勤時間帯の鉄道利用者が60%程減少した。
テレワークは、3月下旬の東京は26%だったが、6月第一週は67.3%だった。全体平均は35%、東京は50%、地方は30%弱だった。業種別では教育、金融で高く、医療、小売、農林水産で低かった。規模が大きい企業ほど実施している。

2. 労働時間の減少と生活の変化

新型コロナウイルスの影響によるテレワークの広がりで首都圏、地方とも通勤時間が減少した。減少した通勤時間は余暇の時間に回った。子育て世帯では家族と過ごす時間が増えたところが多い。
テレワーク希望者の割合はテレワーク実施者の割合より高く、テレワークは今後拡大すると思われる。
サービス、生産工程では、テレワーク経験者においてもテレワークできないと回答する割合が高く、実際にしにくいと思われるが、運輸、通信、電気では経験者で可能と回答する割合が高く、これらの業種ではテレワークを拡大する余地があると思われる。
テレワーク拡大に必要なこととしては、社内外の慣行の見直しに類することや、社内インフラに関することが多かった。

第2節　働き方改革の進捗

1. 有休取得、残業抑制に向けた企業の取組と労働時間

年五日の年休取得義務に対して、企業は取得促進に向けて従業員への働きかけを強めていた。一方、年休取得にインセンティブを与えた企業はほとんどなかった。年休取得は、平均年6.3日から7.9日に増加した。
残業抑制に向けて、企業は時間管理の徹底などの対応を取った。人事評価項目に追加した企業は、増加してはいるが少なかった。年平均の月間残業時間は、2015年の25.4時間から2019年は20.9時間に減少した。
正規社員の一ヶ月あたりの総労働時間は、2015年の177.8時間から2019年は173.2時間に4.7時間減少している。それでも月201時間以上働く正規社員は2019年で768万人いた。2020年は第1四半期はコロナで減少したが、7月には771万人と2019年の水準を超えている。

2. 同一労働同一賃金の取組と賃金の動向

2019年7月の調査では、正規社員と非正規社員の間に昇給、考課、賞与、退職金、家族手当、住宅手当などでは、適用される割合が異なっていた。
同一労働同一賃金に向けた各種取組は、2015年以降、大企業、中小企業とも年を追うごとに広がっている。2014年以降の給与推移は、非正規社員の所定内給与は、正規社員に比べると増加の度合いが鈍い。非正規の6月は対前年プラスになった。非正規にも賞与を支給する会社が増えたからと思われる。
同一労働同一賃金に関する企業の認識の調査を2019年と2020年に行った。障害は、①賃金がかさむ、②情報不足、③慣習の変更が困難といったものだった。

第3節　働き方改革の効果検証

1. 働き方改革の雇用や生産性への影響

有給休暇取得推進企業では、離職率の低下や労働時間の短縮を伴って、生産性が向上した。
残業時間の公表や人事評価項目への追加を行った企業では労働時間が減少した。
同一労働同一賃金に取り組んだ企業では非正規雇用労働者の比率が低下し、労働時間は減少した。

2. 多様な働き方と働き方改革

有給取得推進や同一労働同一賃金に取り組んだ企業では採用が増加した。
人事評価を一本化した企業では、女性社員や高齢者雇用が増加した。
コロナ下においては、生産性は低下したと感じている就業者が多い。一方コロナに関係なく、テレワークを導入した企業としていない企業を比較すると導入している企業の方が生産性の向上が大きい。

第4節　本章のまとめ

(割愛)

第3章　女性の就労と出生を巡る課題と対応

第1節　女性の就業と子育てを巡る現状と課題

1. 他国と比較した我が国の特徴

女性の労働参加率は、
- 2019年で、第1グループはスエーデン(80%)、第2グループはドイツ、イギリス、日本(70%)、第3グループはアメリカ、フランス(65%)、第4グループは韓国、イタリア(60%)
- スエーデンは20年間ほぼ変化なし。アメリカのみがこの20年で低下した。ドイツは2000年代前半、日本は2013年以降増加のスピードが上がった。
女性のパートタイム労働者比率は、
- 2019年で、日本-40%強、イギリス、ドイツ-40%弱、イタリア-30%、フランス-20%強、スエーデン-20%弱。日本とイタリアが増加しており、他は減少している。
- 25～54歳に限定すると、ドイツ、日本、イギリス、イタリア-35%、フランス-20%、スエーデン-10%。増減の推移は、全体と同様。
子供のいる場合の就労率だが、6歳未満の子供がいる場合は、日本は50%。これに対し、アメリカ、イギリス、フランスは70%前後、イタリアは60%弱となっている。子供ができても仕事を続けられるための環境整備が必要である。

2 . 地域間比較を通じた特徴

女性の就業率が全国平均よりも高いのは北陸、南関東、東海、沖縄、北関東だが、差は主に子供がいる女性の就業率の差による。
正規雇用比率は25～34歳の年齢階級で最も高くその後下がっていく。製造業や医療・福祉につとめる女性が多い地域は下がり方が小さい。
子供がいる世帯での年齢階級別の就業率は、45～49歳がピークとなる。子どもの年齢が上がると就労の障害にならなくなることと整合している。
地域別では三世代同居の世帯比率が高いと子供がいる世帯での女性の就業率が高くなる。

3 . 子育て世代の就業支援に向けて

保育所等定員数は、2010年の216万人から2019年には297万人に拡充された。待機児童数は、2010年の2.7万人から2014年は2.1万人まで減り、その後増加し2017年に2.7万人まで増加したが、2020年には1.2万人まで減少した。
女性の就業率と未就学児人口に対する保育所定員数の比率の関係を都道府県ごとに見ると相関がある。保育環境の整備で女性の就労が促進されていると考えられる。
育児休業は、女性の所得率は80～90%で推移しているが、男性は2019年でも7.5%に留まっている。
育児休業の取得の多寡と女性の就業率には正の相関がある。
女性活躍の観点からも正規雇用比率の向上が望まれる。

第2節　女性の就業継続と結構・出産を巡る現状と課題

1. 就業と出産の関係

国別に見ると、合計特殊出生率と就業率には正の相関がある。これは因果関係にあるというのでなく、両方を促進する政策が打たれているということである。就業率の上昇は、出生率を上げる効果があるが、その効果は近年弱くなっている。
都道府県別では、婚姻率と病床数が正の影響を、男性失業率、女性管理職、女性喫煙率が負の影響を与える研究がある。別の研究では、35～39歳時点の未婚率と女性の賃金上昇が負の影響を与えるとしている。
女性の就業率が高い都道府県は出生率も高い。

2. 出生率の決定要因と就労継続

初婚同士の夫婦がもうけた子供の数は、以前は2.2程度、2015年は1.94とほぼ同レベルを維持している。
25～29才の未婚率は、80年は25%、2000年は50%越え、2015年は60%。30～34才の未婚率は、90年までは10%、2005年は30%。
我が国は、非嫡出子の割合が3%と海外に比べて小さいので、未婚率の上昇が出生率の低下につながっている。
独身者の90%が結婚を望んでいる。結構できない理由は適当な相手が見つからない、結婚資金が足りない、といったものである。
未婚女性がほしいと思う子供の数は、二名前後で変わっていない。希望出生率の実現を阻んでいるものは、子育てに金がかかるため、あきらめているという要因である。
第1子出産時、正規の職員の場合、80年代後半には6割近くが離職していたが、2010年代前半には3割程度に低下した。一方、パート・派遣の場合、2010年代前半でも75％弱の者が離職している。

3. 継続就業率と出生率の同時引上げ

1980年までは専業主婦世帯の方が多かったが、2019年は7割が共働き世帯である。
共働き世帯が標準化する中では、男性の家事参加が求められる。男性の家事・育児参加時間が多ければ、第二子を儲ける割合が高くなる。ワーク・ライフ・バランスや健康維持といった面だけでなく、出生率の回復に向けても、長時間労働の是正が必要である。
新型コロナウイルスの影響下において、家事・育児に関する夫婦間の役割分担に変化があったかという質問に対して、夫の役割が増加・やや増加したという回答が合わせて26％となっている一方、妻の役割が増加したという回答も同時に3割近く増えており、必ずしも夫の家事・育児が進展しているだけではない点には留意が必要である。

第3節　本章のまとめ

(割愛)

第4章　デジタル化による消費の変化とIT投資の課題

第1節　デジタル化による消費の変化

1. ECの普及と消費

日本のEC市場規模は、371億円で米国に次いで第2位となっている。EC普及率は、多くの先進国で8割だが、日本は4割となっており、拡大の余地がある。
商品別に見ると、額では衣類、食品・飲料、電気機器の順に多く、EC化率では事務用品、書籍・メディア、電気機器の順に高い。
EC消費額の増加は、利用世帯数の増加が寄与している。世帯数増は、特に30代、40代の子育て世代で顕著である。利用する世帯数の割合は、収入が多いほど高く、都市規模が大きいほど高く、年齢が高いほど低い。
ECを利用する際に良かった点として「自宅まで届けてくれる」、「ポイントが貯まる」、「24時間いつでも購入できる」といった項目の回答割合が高い。ECを利用する際に困った点として、「実物が見られない」、「送料がかかる」といった点の回答割合が高くなっている。

2. EC市場の拡大と実店舗の動向及びEC普及の将来見通し

衣料品、飲食料品のEC<利用は全体の中では少数だが、増加率は高い。/LI>
EC市場においては、プラットフォーマー3社が6割を締めている。こうした傾向は、他の国でも同様である。一方実店舗を運営する業者もECへの投資を進めている。EC化率は家電大手で1-2割、家具・食品・衣料大手で数%だが、二桁成長しており、成長ドライバーとなっている。
現在4割程度のEC普及率だが、試算ではあと1～6年で欧米並みの8割まで増加する結果になった。

3. シェアリングエコノミー・サブスクリプションの現状

シェアリングエコノミーの規模は、2017年度で766億円、2019年度には2017年度対比51％増の1,156億円と見込まれており、さらに、2023年度には2017年度対比2.2倍まで拡大すると予測されている。
シェアリングエコノミーの内訳（2018年時点）は、「モノのシェア」が27.6％、「スペースのシェア」が26.7％、「お金のシェア」が 24.3％、「スキルのシェア」が11.2％、「移動のシェア」が10.3％となっている。
サブスクリプションの市場規模は、民間調査会社によると、2019年度で6,835億円、2024年度にはその約1.8倍の1兆2,117億円まで拡大すると予測されている。
各種シェアリングサービスの利用経験を聞いたアンケート調査によると、我が国は、他の先進国と比べて、「利用したことがある」との回答は低く、拡大の余地がうかがえる。
カーシェアリングの増加が自動車保有台数に与える影響を分析すると、カーシェア台数（2019年3月時点で35,630台）が1台増えるとマクロの自動車保有台数（2019年3月時点で6,154万台）は約50台減少するとの結果を得られる。
どこであってもシェアができるような環境が整えば、全体としての利用頻度は増加し、自動車の稼働率が上昇しながらマクロの保有台数も増加する可能性を秘めている。
2005年を基準とした累積寄与でみると、2009年にかけて音楽配信が増加する中、CDやアナログディスクなどの音楽ソフトの売上げは減少傾向にあり、2008年時点で累積増減寄与がおおむね均衡した。
その後、2009年から2013年にかけて、音楽配信23も減少に転じたものの、2014年以降はサブスクリプションを中心としたストリーミングの増加から、音楽配信は再び増加傾向に転じている。
2018年には、音楽配信のうちストリーミングの売上高がダウンロードの売上高を上回った。
サブスクリプションの進展は、現行のGDP統計では捉えることの出来ない未計測の付加価値を生み出していると考えられる。

第2節　新たな日常」に向けたIT投資と課題

1. 企業投資の現状と課題

従業員一人当たりでみると、「情報・通信機器」や「電子部品・デバイス」のソフトウェアストックは積み上がりが顕著である一方、その他の業種については、2000年代前半からおおむね横ばいとなっている。
我が国のIT投資フローは、ハードウェア、ソフトウェアともに他の主要国に比べて伸び率が低めとなっている。また、ソフトウェアに研究開発投資を加えた無形固定資産投資（ストック）も、我が国は他の先進国に比べて見劣りしている。

2. IT関連投資による省力化と労働生産性

製造業については、機械設備装備率、ソフトウェア装備率ともに労働生産性に有意のプラス効果があるが、ソフトウェア装備率の方が僅かながらその効果が大きい。非製造業については、ソフトウェア装備率は労働生産性にプラスの効果がある。
製造業と非製造業との比較では、工場現場をかかえる製造業の取組割合が高くなっている。ただし、全規模・全産業の取組状況は2割程度であり、取組割合が高い大企業製造業でも5割未満と半数に満たない。
バックオフィスの省力化を意図したIT投資（WEB・IT関連のソフトやシステムの導入、RPA等）についてみると、現場と同様に、大企業の取組割合が高く、製造業・非製造業ともに6割を超えている。
バックオフィスについては省力化を意図したIT投資の効果が労働時間の削減に繋がっている一方、付加価値生産性の向上には明確に結びついていないようである。

3. 「新たな日常」に向けた投資の課題

国際比較で見ると、教育現場のデジタル技術の充足度は45ヶ国中32番目、行政のオンライン化については30ヶ国中30番目であった。
我が国のIT人材の約7割が、IT関連産業（「ソフトウェア業」、「情報処理・サービス業」、「インターネット付随サービス業」）に所属している。これは、他の主要先進国では35.5～46.6％と半分以下であることと比較して、かなり高い割合である。アメリカでは、IT人材全体の1割以上が公的部門に所属している。一方、我が国は、僅か1％にも満たない。
IT業界全体として人員が不足している。とりわけ、IoTやビッグデータ、クラウド活用に関するスキルを持つ「デジタル人材」は、3割強しか確保できておらず、AIの技術を持つ「AI人材」は1割強しか確保できていない。

第3節　本章のまとめ

(割愛)

コンパクトにまとめようと思ったのですが、結構な分量になりました。でもまあ元はA4で222ページですから、それを考えれば結構コンパクトになったんではないでしょうか。実際の白書はデータを参照しながら語っていますので、興味を持ったところ、疑問のあるところは、白書の内容に当たった方が正確に理解できると思います。

内容を理解するに当たっては、これが2020年10月頃に書かれて、11月に発表されたものだということを念頭に置いておく必要があります。特に新型コロナウイルスの影響については、第2波が終わった頃に書かれたもので、、その後に起こった第3波、第4波が起こる前のものだと理解して読む必要があります。

経済財政白書 (令和2年度)のURL : https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je20/index_pdf.html

(2021年 5月 8日　記)

★ [SilverSackの自画自賛] SilverSackの書斎から

経済財政白書 (令和2年度) (その1) 要約