↑ 「SilverSackのMusic Box」のページへ

↑ トップページへ

★ [SilverSackの自画自賛] SilverSackのMusic Box

♪

 「選ばれざる国民」 東京事変


うるうるうるう」で、「他の曲は下手したら物議を醸したかもしれませんから。ま、そこら辺の所は別記事で書きます。」と書いたその件です。東京事変が復活したのは、2020年1月だったようですが、その時最初に発表されたのが、ここで取り上げる「選ばれざる国民」です。この曲は、ギターの浮雲さんの作曲で、摩訶不思議な曲調ですが、ここでは椎名林檎さんの手による歌詞の方に注目します。

終日片手はオンライン
総べてはワイファイ次第
斯く言う生身はオフライン
Tokyo

晒す理想像 名前を使い分け
匿う本性 削り合うエナジー
ばれ出した素顔 加工を施せ
何も生じない ファンタジー

電波圏内燃料満タン

圏外も炎上中刺し違える群衆
善意ほど一瞬で殺意に変わる
熱心なファン皆辛辣なアンチ
センセーション飽き足らない

縺れる男女 痺れかけた粘膜
解れる情緒 忽せのリビドー
馴れ切った作法 惰性で弄れ
何も生じない エクスタシー

あわよくばワンクリック
ワンタッチワンチャンス
淫らなエクスペリエンス
もっと 鳴呼味わいたい

直ぐ美味しく 凄く美味しく
贅沢か質素か世論の骨子だ
思いっ切り遊んでは食べては
目を閉じていたい気持ち良く
好都合な因子を社会が見出す
序列に屈する民宇宙に屈する
不公平で当然平等なんて強弁

正しい行い 均しい扱い
険しい商い 約しい暮し
間違い裁け 出る杭潰せ
噂飛び交う 嚏に戦慄く
アリバイの嘘を捜し論う
私は誰

人生の本番 始まんない
一向に緞帳が上がんない
一生を訓練で終えるんだ
一人ぼっち そう完全に

いよいよ冷え込んで
妙に人恋しい一寸リスタート

元は無関係 人混み篩い分け
共犯関係 突止めるシナジー
羞らいの距離 目線で招いて
新触感の スイートスポット

すべからくワンクリック
ワンタッチワンチャンス
清らなエクスペリエンス
遂に 鳴呼喰らわせたい

在ると良いなが在ると良い
僭越か謙虚か各位の任意だ
ケセラセラ嫌っては愛しては
噛み分けていたい容赦をせず
不都合な因子を社会は見過す
シカトで結構
序列を制する民宇宙を制する
そう弁えたい
勘違いすな世界の平和を願え
這い蹲って
選ばれざる身分迎え入れ祝え
ええもう喜んで


(私見)

スマホとネット回線があれば
まるまる一日楽しく過ごせる
その本人は部屋から出ることもせず
それが今の東京

その場その場で意見を変え名前を変え
叩くのは悪役に仕立て上げられた実在の人間
明日は我が身、素性はばれちゃいけない
でも、そんなやり取りは何も生み出さない

ネットはそんなやりとりで溢れている

マスメディアがネットの炎上を取り上げ
善良な民衆が仕立てられた悪役を罵る
昨日の味方は明日の敵
そしてみんながいざこざを求め続ける

夜の営みの男女はもうときめきもなく
気持ちも離れ、性欲をもてあます二人は
それでもいつも通り行為を進める
そして快感もなく行為は終わる

ネットのサイトを覗けば
リンクをクリックすれば
ワクワクする相手が見つかるかもしれない
ああもう止められない

皆が求めるのは安直な快楽
金持ちは叩き、貧乏人は持ち上げ
それでいて当人は遊び放題食べ放題
都合のいい意見を言うコメンテーターが選ばれ
聞きたくないことには耳をふさいだまま
一旦悪役のレッテルを貼られた人間は二度と立ち直れない
平等な世界にしましょうなんて言ってもそうなるもんですか

正しい行いをしましょう、みんなに平等に接しましょう
お客様は神様です、お金儲けは見にくいです
そして行うのは、間違いを行った者、和を乱した者の糾弾
飛び交う情報は本当か嘘か判然とせず、おそるおそる眺め
それでいて人の矛盾を探してそれを突く
私はどの私だったっけ

そうやって自分を隠して生身の人間に向き合わないあなたは
人生を始めていないのと一緒
そうやって一生、人生の予行演習だけやって終わるつもり??
結局一生ひとりぼっちよ

そうかひとりぼっちか
1回ログアウトしてログインし直すか

見知らぬ二人がネットを漂う多くの人の中から
お互いの人生を豊かにできる相手を見つける
オンラインで縮まる二人の距離
今までなかった感覚

ネットのサイトを覗けば
リンクをクリックすれば
そんなことまでできてしまう
なんて素晴らしい時代

あって欲しい世界がそこにある
傲慢な奴も謙虚な奴もそれは一緒
そんな勝手な世界を私は好きで嫌いだけど
冷静に見つめていこう
そんなうざったい奴に興味はないって?
無視してくれて結構よ
ネットで頂点取れれば天下を取れるって?
そうなんでしょうけど勘違いしないで
世界平和でも祈りなさいよ
私はそんな身分にはならないわ
私は無視される身分なんでしょうけど
本望よ

意味が取れそうで取れない、取れなさそうで取れるギリギリを攻める言葉遣いは椎名林檎さんのお手のものです。相変わらず見事、というほど深くつきあったわけではないですが、そんな気がします。含意が取れるように言い換えてみたのがです。言葉遣いがダサいのは容赦してください。で、書いてはみましたが、恐らく聞く人が違えば人の数だけ別解が出てきそうな気がします。私も所々分からない中でひねり出したところもありますし。

先に「下手をしたら物議醸すかも」と書きましたが、かなりオブラートに包んでますけど、かなり世の中にけんか売ってません?? 「スマホ片手に生身の人間も相手せず何やってんだ。おまえがやってることは全く以て世の中の役に立ってないんだぞ。」とか「相手のあら探してこき下ろしてマウント取って、どの面下げて平等だ。」とか「自分が聞きたい意見だけ聞いて、私正しいです、って、視野狭すぎじゃないか。」とか。100%同意します。ああ、こんなこと歌ってくれる人、なかなかいないもんなぁ。そんでもって、こんだけ過激なのに、物議醸さないんですよ。ここら辺、言葉の選び方のセンスなんでしょうねぇ。林檎師匠、一生ついていきます。


(2021年 5月22日 記)