自分の人生を憂うというか儚むというか悔やむというかそういう歌です。ローリングストーンズに「I can't get no satisfaction」とうたう曲がありますが、あれよりも格段に絶望の度合いが深い歌詞と曲調です。そういう気分だからこういう曲を作ったんでしょうが、そう歌いながら実は結構正気なところがあちこちに垣間見られます。曲名の「Paranoid」とは、「偏執狂の」とか「被害妄想を持った」とかいう意味ですが、こういうタイトルをつけるということは「こういう状態はどこかおかしいよ」という意識があるということですよね。「気が狂っている」という意味の単語には、madとかcrazyとかlunaticとかinsaneとかいろいろありますが、Black Sabbathはもっぱらinsaneという単語を使います。それもyou are crazyじゃなくてI am insaneなんですね。「おかしいのは俺の方なんだろう」という意識があるようで、狂気を歌うロックバンドが多い中、私がBlack Sabbathにしっくりくるのはそこら辺の感覚が近いからなんでしょう。
この曲は、このアルバムの中ではきわめてシンプルな構成で、素っ気ない位なんですが、完全にハードロックのスタンダートナンバーになりました。結構他のバンドにもカバーされています。このバンド、2010年にOzzy Osbourne(Vo), Tommy Iommi(G), Geezer Butler(B)のオリジナルメンバーにドラムを加えて、活動を再開し、以前と同様の人気を博しました(年齢も年齢なので、2017年2月に活動休止したようですが)。Youtubeに2012年のライブのParanoidがあるのですが、みんな還暦過ぎてるのに演奏は40年前のキレそのまま(なんとヴォーカルも)、観客も老いも若きもヘッドバンギングでノリノリ、ということで、発表からもう50年経とうとする曲ですが、全くもって現役です。スゴイ。

(2017年 9月30日　記)