天皇、日本統一への道 (その15) - たぶんこうだったんじゃないか劇場 [SILVER SACKの自画自賛]

飛鳥の遺跡に興味を持って、それを見るまえに「ブラ明日香 - 0. 飛鳥時代とは」で飛鳥時代についてWikipediaを情報源としておさらいをしました。で、飛鳥時代といっても、実際にはa) 蘇我氏の時代、b) 天智天皇の時代、c) 天武/持統天皇の時代の三つの時代に分かれていて、全体としては、天皇を取り巻く有力者の淘汰が進み蘇我氏のみになった後、天智天皇、天武天皇と二代かけて天皇中心の国を作り上げたという経緯であると知って、「いや、これって、天皇優勝に向かうトーナメントの準決勝と決勝だけじゃん。予選から見てみたいわ。」と思ったのでした。ここら辺をなんとか知りたいもんです。で、このシリーズのタイトルは「天皇、日本統一への道」です。

ここら辺は、邪馬台国の所在地論争とか、天皇の実在論争とか、正に「諸説あり!!」の世界なので、どこぞの博物館に行って「はい、分かりましたー。」なんてことはあり得ず、まずはいろいろな書籍にあたって理解を深めるところから始めることになります。でこちらは、「SilverSackの書斎から」に引っ越して展開します。

「日本統一への道」は「たぶんこうだったんじゃないか」

数冊ほど関連する本を読み終わって一旦ここら辺でまとめてみましょうか。数冊ではまだまだ情報量が少ないでしょうが、得られた情報で妄想を膨らませてみようと思います。「天皇、日本統一への道 - たぶんこうだったんじゃないか劇場(劇はないけど)」です。

日本の国家の始まり - 弥生時代(紀元前2世紀～西暦3世紀)

ここら辺は、「卑弥呼とヤマト王権(寺沢薫)」からです。私の推察もいれて「たぶんこうだったんじゃないか」。

紀元前2世紀、弥生時代に入って農耕が始まると北部九州で部族的国家が生まれた。農耕のため多くの人を組織的に動かす必要が発生したから、自分たちの田畑をまわりの者達から守る必要が生じたからと思われる。北部九州で最初にクニが生まれたのは、既に国家が存在した中国との交流があったからではないか。
今の地方自治体ほどの規模の国家が並存する状態はしばらく続いた。国家間の戦闘もあった。規模も徐々に大きくなり、西暦57年にはナ国が漢から金印を授かる、西暦107年にはイト国の帥升が後漢に朝貢した、といったことがあった。2世紀のイト国は福岡、佐賀、大分と愛媛、高知の西部をその領域としていた。

邪馬台国(西暦3世紀中頃)

日本の歴史上の一大ミステリーである邪馬台国についてです。私の見解は、日本統一への道との関連では傍流で、重要性はない、です。

3世紀中頃に歴史に登場する邪馬台国は、恐らくは吉野ヶ里遺跡のあたりにあったと思われる。魏志倭人伝には、邪馬台国はイト国の南にあってイト国を支配していた、との記述があってそれと整合する。当時の統治範囲では近畿からイト国を支配するのは不可能で、邪馬台国が近畿にあったとは考えられない。
邪馬台国は、魏の傀儡政権だと思われる。クニの形にはなっていないが豊穣を祈る女性のシャーマンがいた吉野ヶ里遺跡の集団を魏がそのシャーマンを女王にしてクニに仕立て上げ、イト国を始めとする北部九州の国々を支配下に治めた。蜀や呉と張り合う必要があった魏は日本を支配しているということを蜀や呉にアピールする必要があって、それがこういった行動を生んだと考えられる。卑弥呼がなくなった後、壹与がなくなった後、北部九州はまた元の小国家が並立する状態に戻ったが、日本側には邪馬台国のような統一国家を維持・継続する必要性はなかったからだと考えられる。
魏の後ろ盾がなくなった後、邪馬台国は胡散霧消したと考えられるが、北部九州はその後衰退したわけではなく、それまでの小国並存の状態に戻りそれを継続して、それなりに力を有し続けたと考えられる。

古墳時代初期(西暦3世紀～西暦4世紀)

ここら辺は、「ヤマト王権の古代学(坂靖)」からですね。

北部九州で邪馬台国が成立する少し前、西暦3世紀に入ったあたりから奈良盆地中央東部(今の奈良県桜井市付近)で前方後円墳が作られ始めた。3世紀中頃までは九州北部の国家の方が栄えていたが、3世紀中頃から日本最大の規模を誇るに至った。この奈良盆地で起こったヤマト王権は、九州北部の動きとは無関係に起こったと考えられる。
4世紀半ばまでは大規模な前方後円墳が作られるのはこのヤマト王権の地域だけで、この100年間はこの地域だけが大きな発展を遂げたようだ。古墳を築造するということの意味は、直接的には豊作を祈るということだったようで、北部九州の国々に国防的な側面もあったとのは若干事情が異なる。
古墳を築造する集団がそれ以外の集団より大きな成長を遂げたのは、古墳を築造できるだけ大人数の人間を組織的に動かす能力を有していたことが農作、建築等の他の作業でもより大きな成果を上げたからではないかと思われる。
この時代のヤマト王権はそれなりに発展したが、他地域に攻め入るようなことはなく、自地域の発展にのみ力を注いでいたようだ。

古墳時代中期(西暦4世紀～西暦5世紀)

ここら辺は、「ヤマト王権の古代学(坂靖)」と「倭国の古代学(坂靖)」からです。

4世紀後半になると、佐紀地域(今の奈良県天理市付近)、馬見地域(今の奈良県北葛飾郡)、古市地域(今の大阪府藤井寺市付近)、百舌鳥地域(今の大阪府堺市百舌鳥駅付近)でも大規模な前方後円墳が築造されるようになった。ヤマト王権以外にも有力な勢力が生まれてきたと考えられる。
5世紀前半には古市地域、百舌鳥地域が巨大古墳のメッカとなり、この時期に前方後円墳は最大規模となった。この時期は、宋書に倭の五王の記載が出てくる時代になる。倭の五王の墳墓、政治拠点とも奈良盆地と古市地域を行ったり来たりしており、カワチの勢力とヤマト王権が一つの勢力となったと思われる。
カワチの最初の巨大前方後円墳、津堂城山古墳は、大王のものと考えられるものではない。ヤマト王権がカワチもその領域とする以前はカワチにヤマト王権とは独立した勢力が存在したと考えられる。
5世紀後半になると、ヤマト王権/カワチ、佐紀地域、馬見地域以外にも、岡山市付近、和歌山市付近、葛城地域(奈良平野南部)でも巨大前方後円墳が作られるようになり、各地に有力集団が出てきていた。ヤマト王権のみが有力だった古墳時代前期とは勢力図は大きく変わっていた。

古墳時代後期(西暦5世紀～西暦6世紀)

ここら辺は、「倭国の古代学(坂靖)」からです。

5世紀後半、ワカタケル大王(雄略天皇、倭王武)の時代は、各有力勢力とのバランスを取りながら、中国とも交流し、堅実な統治を行っていたが、ワカタケル大王がなくなった後、ヤマト王権の力は大きく弱まった。一時期「かつらぎ」の王、ヲシ大王が最も有力な勢力になったようだ。
6世紀に入り、三島地域(今の大阪府高槻市付近)で大きな勢力を持っていたフト大王がヲシ大王の後を継ぎ、後に継体天皇になった。継体天皇は、即位前から愛知県、滋賀県、福井県辺りにも影響力を有しており、広い基盤を持っていた。継体天皇の即位でヤマト王権の影響力が及ぶ範囲は大きく拡大した。
継体天皇の父親の墳墓は、宮内庁が継体天皇陵とする太田茶臼山古墳で、継体天皇はここら辺の出身と考えられる。ヲシ大王とは血縁がなく、その前の大王とも血縁はないと思われる。
6世紀に入ると、筑紫の君磐井の乱、武蔵国造の乱など地方での戦闘が起こった。ヤマト王権はいずれにも勝利し、支配領域は更に広まった。
大伴氏、物部氏などの豪族も力を有し、ヤマト王権の治世にも影響力を持っていた。6世紀後半からは蘇我氏が力を伸ばし、蘇我氏の影響力が特に強くなった。そして、飛鳥時代に入っていく。

この時点では、ヤマト王権は、九州から関東までの範囲を傘下におさめるところまでいったようですが、支配体制みたいなものが確立しているわけではなく、国家としての仕組みを整えていくのはこの後となります。飛鳥時代の100年をかけて、天武天皇が天皇を名乗り、日本書紀という正史を作り、大宝律令を作り、平城京を作り、と、8世紀を迎えたあたりに日本誕生となるわけです。

最後に

奈良県桜井市のあたりで起こった前方後円墳を築造する勢力が発展し、拡大し、350年かけて日本を統一したというのが、「天皇、日本統一への道」ですが、しかし、世界で見られる光景とはかなり違いますね。世界でよく見られる光景では、力のある勢力が周辺に攻め込んで領土を拡大して国を統一するという感じなのですが、このヤマト王権による統一では、周辺地域、他地域へ武力で攻め入るという場面が見られないわけです。和を以て貴しとなす日本ならではという気もしますが、しかし、やっぱり思うのは、「どうやって領土を拡大したんだ」??特に、古市、百舌鳥で日本最大の古墳が作られていた頃、カワチの勢力とヤマトの勢力が一つになったようなんですが、「どういう経緯で」????カワチで最初に巨大前方後円墳を作った人は大王ではなかったわけですからねぇ。謎です。

もう一つ知りたいと思うのが、大王はどれだけの権力を持っていたのか、です。継体天皇がまわりに押されて大王の地位に就いたあたりの経緯で、大王が次の大王を決めたわけではなく、まわりの豪族がそれを決めたわけですから、大王に全権力が集中する状況ではなかったわけです。これも世界でよく見る光景とは違います。日本の歴史を見ると、平安時代も藤原氏、平氏が実権を握っていた時期があり、鎌倉時代から江戸時代までは武家勢力が実権を握っていて、天皇が最大の権力を持っていた時期は意外と少なくて、そういう感じなのかなぁ、と思ったりもしますが、この時代にそれを示す証拠があるわけではないので、やはり????で知りたいと思うわけです。

そこら辺が解明される日を待ちながら、今回の探索を終わります。

ネット上の関連情報

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(2025年11月29日　記)